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8ピンPICで作る 昇圧回路
8ピンPICを使ってオペアンプ用に作った負電源の回路を応用して応用して昇圧回路を 作っちゃおうというお話です。専用ICを使わずともまぁまぁな性能が出ましたのでご紹介します。
経緯
オペアンプ用に作った負電源の回路を応用して、 8ピンのPICで昇圧回路を作っちゃおうというお話です。同じようにチャージポンプを使って昇圧する ことで、マイコン用の単電源から高い電圧を得ようという魂胆です。
実験の目的
せっかく、8ピンPICとチャージポンプ回路で実用レベルの負電源 が作れたので、それを応用して昇圧回路に改造してみます。
目標としては、3.3V電源から液晶表示器をドライブしたりバックライトを光らせたり、 もしくは5V電源から高圧書き込みPICの電源などに応用できればいいなぁ、などと 思っております。が、いずれにしても1段のチャージポンプ(倍圧)だけでは足りないだろうと 思うので、2段階以上の昇圧が実験できると良いんですが…。
あまりハードルを高くすると面倒になってしまうと思うので、ひとまずは単純に1段のみの昇圧を 試してみることにします。
実験の方針
あまり手間を掛けずに、昇圧に応用できるのかを手っ取り早く調査しつつ、また、どの程度の電圧が取り出せるか を調べます。
負圧生成回路の実験で散々色んなバリエーションの実験をして懲りているので、とにかくケースを絞り込みます。
具体的には…
- 発振周波数は50kHzに限定
- コンデンサの種類はOS-CONに限定
- コンデンサ容量は10uF、3.3uF、1uFの3種
- 入力電源は秋月の5Vスイッチングアダプタ(出力5.17V)だけ
- 負荷抵抗は例によって300Ωと75Ωの2種類
ということにして、作業量を軽減します。
実験の方法
バリエーション
上記の”実験の方針”で挙げたとおりです。
回路図
例によってスイッチトキャパシタを使うことで、電源の電圧(5.17V)にコンデンサに溜まった電圧 を乗せることで倍圧化しています。
発振に使用するマイコンも、例によってPIC12F629を用います。回路図はこんな感じです↓。 負電源の生成と部品の数は一緒ですが、一部向きが逆だったり、GND接続からVdd接続に変わっていたりと、 ホンの少しだけ違っています。
ちなみに、昇圧専用ICとしては、LTC1144で使った昇圧する場合にはショットキバリアダイオードが 外付けで2個必要になりますし、もっと大きい電流が取れる(らしい)昇圧ICのTL499Aだとかなり大きい インダクタも必要になります。部品点数という点についてデメリットは皆無と言っていいかもしれません。
プログラム
負圧生成のものを流用します。50kHzに限定しているので使うのは1個だけ。一応以下にプログラムのリンクを 貼っておきます。(変更ありません)
クリックしてダウンロードしてください。なおFUSEビットですが、
- リセット端子 : 外部端子
- 発振回路 : 内蔵オシレータ4MHz使用(GP4は入出力端子に設定)
にそれぞれ設定してください。
実験結果
出力電圧を以下のグラフに纏めます。
10uF | 3.3uF | 1uF | |
50000Hz 300Ω | 8.60V | 8.57V | 8.41V |
50000Hz 75Ω | 5.52V | 5.49V | 5.30 |
上記の出力電圧をグラフ化します。
電圧を各抵抗値で割り算して、電流を求めグラフ化します。
以上のとおり、300Ω負荷ではおよそ8.5V程度、75Ω負荷ではおよそ5.4V程度の電圧で 安定した出力になりました。電流は、300Ωの場合約28mA、75Ωの場合約72mA程度の 電流になりました。75Ωの抵抗は、当たり前ですが暖かくなっちゃいました。
負電圧の実験と比較するとコンデンサの容量についてはあまり大きな影響は無い様子です。また 倍圧化なので出力電圧の絶対値が大きくなり、その分出力電流(負荷)が大きくなりました。
考察
出力電圧・電流について
負電圧と同じ300Ω、75Ωの負荷を掛けても、取り出せる電圧の低下幅が大きくなっています。
この原因は、倍圧化することによって電圧の絶対値が大きくなり、オームの法則から電圧に比例して 電流が大きく、電力はさらに2乗に比例して大きくなることに起因していると考えられます。
出力電圧を調べてみると、300Ωでも30mA程度の電流が流れており、このときの電圧の低下幅は 約2V程度。これは負電圧出力回路での75Ω時の電流に近い値(40mA)ですが、そのときの 電圧低下幅も大体2V程度でした。
これらの事から考えると、この電流値に対して2V程度下がっているのはそこそこ妥当な数値かも しれません。
なお75Ω負荷の場合は出力電圧が5.4V程度、その際の出力電流は72mA程度となっており、 スイッチングコンバーターからの供給分(5.17V)と差を取ると0.23V。ほとんど機能していません。 これだけの電流となると、もはやオーバースペックということでしょう。PICの出力PINに あまり大きな負荷を掛けると、PICの寿命を極端に縮める恐れがあるようです。ご注意!
もう少し小さい負荷(大きい抵抗値)での使用なら、実用に耐える電圧が利用できるかという 気がします。(せいぜい10mA程度(1kΩ)でしょうか。実際に実験してみないとなんとも言えませんが。)
例によって、出力電圧は安定化されていません。負荷が一定ならいいのですが、負荷変動の大きい回路に 繋ぐ場合は、安定化を図る手当てが必要かもしれません。
倍圧回路(コンデンサ、ダイオード)について
倍圧化を行う回路として、ちゃんと機能しているようです。
とはいえ、ポンプを駆動するPICの出力がそれほど強くは無いので、3倍圧を行うにはもしかしたら スペック不足かもしれません。数mA程度の負荷なら3倍圧にも使えるかもしれませんが。
チャージポンプによる昇圧回路のメリットは、なんと言ってもインダクタを使わなくて済むこと。 電波ノイズの発生が最小限で済むはず。インダクタを使う場合は、インダクタから電波ノイズが散るので…
取り出せる出力量とノイズ量はトレードオフの関係にあるようです。電力ではなく電圧が必要な場合であれば 3倍圧回路にも使えるかもしれません。PICライター用の13V程度なら使えるような気がするんだけどなぁ… PICKIT2の内部はインダクタで昇圧しているようですが…
参考までに、3倍圧とかそれ以上に昇圧するための参考サイトを挙げておきます。
まとめ
8ピンPICを用いて2倍昇圧する場合、負荷がある程度小さければ使用可能であろうということが わかりました。といいつつ、30mAも取り出すと電圧の低下が目立ってきます。もう少し小さい出力で 足りるならこの回路でも用を足すでしょう。
3倍圧、4倍圧とドンドン圧力を上げて使いたい場合は、素直にインダクタを使ったものに したほうが良さそうです。
暇と機会があれば、もう少し色々なバリエーションについても調べてみたいと思います。
以上で、この実験を締めくくりたいと思います。