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8ピンPICで作る オペアンプ用 負電源
オペアンプを使うときに必要になる負電源を、8ピンのPICを使って生成してしまおうという、 ビックリの実験を行ってみました。意外に実用的な結果が得られたので、是非ご覧ください!
OS-CONを使って追試を行いました。 なかなかな結果が得られたので、そちらもご覧ください。
経緯
オペアンプ。 単電源を選ぶ? 負電圧を用意する?
マイコンにオペアンプを組み合わせてちょっとした回路を組んでみようかなぁって思ったら、 意外と面倒に思うのはオペアンプ用の負電源。なにしろマイコンといえば、普通は5Vとか3.3Vとかの単一電源を使うもの。 オペアンプを組み合わせるには、単電源対応品を使わない限り、いつも負電源が付きまといます。
だからと言って単電源で動くオペアンプは一般に動作速度が遅いか、あったとしても高速動作のものは高価です。 ビデオ信号を扱うレベルとなると、しかもRGB各3系統用のオペアンプを動作させるとなると、単純計算では白黒の3倍の 数のオペアンプ(しかも高価)が必要になるので、いっそ負電源を搭載する方が良さそうです。
それに単電源だとそもそも反転増幅に使えないし…。
負電圧を用意するとして…
と言っても、バカ正直にインダクタや発振回路まで使ってゼロから負電源を設計するのも面倒だし、 そもそも私はアナログ回路が苦手。
一方負電源と言えば、LTC1144などのようにIC1個+数個の外付け部品で負電圧を生成出来る便利なICも売られ ていますが、単機能な割に意外と値段が高いのが玉に瑕。ICの1個単価300円~といった感じ。外付けの部品も必要だし。 オペアンプの値段を削っても、電源回路があまり高価になっちゃえば本末転倒…( ̄〆 ̄)
なにか良いものは無いかとネットの海をさまよっていたら、タイマーICのNE555互換(LMC555など)と数個の部品で組んだ チャージポンプで負電圧を発生させる作例などが公開されていました。
あまり沢山の電流は取り出せないみたいですが、555なら単価は安いですからねぇ。で、これをそのまま真似しちゃう 手もあるんですが、これらは専用ICに比べてそれほど沢山の電流が取り出せないことと、外付け部品が若干多いことと、 発振周波数がハードウェア制御(抵抗値やコンデンサ容量でコントロール)、というあたりが少々気に食わない感じです。
あと555の場合、出力波形のデューティー比を50:50にするのに少し苦労するらしいです。自分でアナログ回路の 計算したり調整したりするの、イヤだよー。
で、どうしようかと…
なんかいい方法が無いかなぁと思っていたんですが…。なんとなく試してみたいことが頭に浮かんできました。 タイマーIC555の代わりに8ピンPICを使ったら…と。
大量に買い込んだまま、あまり使わず死蔵されている12F629や12F675などなど。
何しろこれらはオシレータ内蔵だし発振の周波数はソフトウェアでコントロールできるから外付け部品は555より 少なく済むし、自由自在。それにIC全体ではそこそこの出力電流が取り出せるはずだし…、と色々皮算用をしてみたところ、 うーん、実験してみたいなぁ…と。
ICの単価では555より少し高くなりますが、部品面積や部品数の点では若干有利。かつ専用ICよりはだいぶ安く仕上がるはず。 はたしてどうなることやら…
まずは参考資料を列挙
幾つかのサイトを眺めていたのですが、その中では特に以下の2つのサイトが参考になるかと思います。
まずはこちらの PV 変換回路に使われている”LMC555を使った負電源”ですね。シンプルですが秀逸です! チャージポンプを使った 負電源です。
そしてこれ。DC-DCコンバーターの実験に 出てくる回路ですが、上記と違ってチャージポンプで倍圧を生成している実験です。この回路の後段のダイオードやコンデンサの極を逆にするのと、 片方のダイオードの接続先を9V→GNDに変更すれば、負圧を発生できるはず。
これらの情報に共通して言えるのは、チャージポンプ回路は「発振回路」「2個のダイオード」「2個のコンデンサ」だけで できちゃうよ、って言うことですね。これら以外にもトランジスタ2個を使って電流を稼ぐ回路などもありますが、 ご興味のある方は是非一度検索をかけて見て下さい。いろいろ面白いサイトがヒットするはずです。
で、今回の目論みですが、発振回路の部分を8ピンのPICで代用してしまえば良いのでは?という短絡的な発想から実験に至りました。
実験の目的
で、これらの情報をベースに発振回路には8ピンのPICを使いつつ、発振周波数や使用するダイオードの種類、 コンデンサーの容量、負荷に掛ける電流に幾つかのバリエーションを設け、どの様な構成にするとどの程度の電流が 取り出せるのかを実験してみようというのが今回の主旨です。
そうそう。もう一つの目的。こんな簡単な回路で生成した負電圧を使って前の実験 のようにビデオ信号出力を行ったらノイズやジッタが乗るのかどうかを観察し、実用に向くのかを検証してみたいと思います。
実験の方針
8ピンPICで一番安い(うちの一つである)12F629を発振回路に用い、発振周波数、ダイオードの種類、 コンデンサ容量にバリエーションを設けて、現実的にどの程度の電流を取り出すことが可能なのかを検証します。
バリエーションについては以下のとおり。
(1)発振周波数
・発振の周波数が低いと音声信号の増幅時に影響が出ることがあり、一方でダイオードは(特にシリコンでは) プラスとマイナスの切替時に導体と化す瞬間があり、コンデンサに溜め込んだ電気の一部を浪費してしまいます。 使用するダイオードによっては周波数を高くすると取り出せる電流の量が激減することが予想されます。 この周波数をどの程度に設定するといいのかを検証します。
出来れば可聴域(20000Hz)を越える周波数を使用したいところですが、場合によってはもっと低い周波数(可聴域) でなければ電流が取り出せないかもしれませんし、一方、周波数を低くすれば逆に供給電流が減ったりリプルが大きくなって しまうかもしれませんし…。というわけで、それなりのバリエーション数を試して、効率のよい組合せを探します。
(2)ダイオードの種類
ダイオードといえば通常は整流用のシリコンダイオードが思い浮かびますが、上記の通りプラス・マイナスの切替時に 瞬間的に導体と化し、せっかくコンデンサーに溜めた電子を流出してしまいます。特に高周波スイッチングでは単位時間あたりの 回数が増加するため、その傾向が顕著になるようです。
一方、ショットキバリアダイオードの場合は導体になってしまう時間が短い(らしい)ので、 一般にスイッチング回路に多用されていますが、シリコンよりも単価が少々高いです。実用上問題ないならシリコンで 済ませたいですが、だめならやはりショットキバリアダイオードを使わざるを得ません。そこらへんのせめぎあいを検証します。
(3)コンデンサの容量
・正直、大きければ良いのか小さければ良いのか良く解りませんが、周波数によって最適なコンデンサ容量が あるんだろうという気がします。それを検証します。本当は、ESRの小さいタンタルやOS-CONなどを 使ってみたいところですが、そういうことをしていると専用ICより高くなりそうなので我慢し、ひとまず 電解コンだけで進めることにします。(一部セラコンを使用)
これら(1)~(3)を考慮の上、どの程度負荷でどの程度の電流が取り出せるのかを検証します。
実験の方法
まずはハードウェアの構成について
以下のような回路図をブレットボードに組み、コンデンサ容量、ダイオードの種類、及び出力部分に掛ける負荷(抵抗値)を とっかえひっかえ組替えて、負荷抵抗にかかる電圧を計測します。今回は1個100円程度で入手が可能なPIC12F629を 使用しましたが、8ピンのPICなら何を使ってもよいでしょう。
LMC555ではICの外付け部品が9個でしたが、この回路では5個で済んでます(回路図に記載していないパスコンを 1個含めて5個です。 負荷抵抗はもちろん数に含めません)。発振器が内蔵されてるし、周波数設定はソフトウェア制御可能なので省部品化が出来ました。 専用ICに比べると、外付けダイオードの2個とパスコンの計3個は増えてますね。
どの方法にしても、大きいコンデンサ2個を外付けする必要があるのは変わりません。これだけの容量はICに内蔵できませんから…。
そうそうPICでの留意点としては、データシートによるとIC全体では125mA取り出せるはずですが、出力ピン1本あたりでは25mAしか 取り出せないので、出力ピン5本を1つに束ねて使用しています。(この場合、くれぐれも出力ピン5本の内容にLOWとHIGHを 混在させない様にプログラムを組まないといけません。ショートしてICがオシャカになります! …このままでも充分危ないですか?)
25mA×5=125mAというわけです。これをデューティー比50:50でLOWとHIGHを切り替えるので、コンデンサーに 供給できる電流は頑張っても平均でこの半分以下になるはずです。なお、GP3はリセット端子に確保しておくことにします。
各種パラメータの設定値のうち、コンデンサー容量、ダイオード種類、負荷抵抗を以下のように設けました。
- コンデンサ容量 : 100uF、33uF、10uF、0.1uF
- ダイオード種類 : シリコンダイオード、ショットキバリアダイオード
- 負荷抵抗値 : 1kΩ、470Ω、300Ω
次に、ソフトウェアの処理方法と使用言語について
ひとまずハードウェアはこれでいいとして、次にもっと面倒な作業:プログラミングについて考えてみました。
アセンブラで組んでもいいのですが、PICのアセンブラはそもそも嫌いだし、メンテナビリティーを 考えると高級言語を使いたいところ。そもそも短いロジックなので、高級言語でも1kワードのメモリに充分入りきる でしょう。
使い馴れたCCS-Cを使いたいところですが、私が持っているCCS-Cはバージョンが古いため12F629には対応 していないようです。久々にフリー版のMIKRO-BASICを使うことにしました。12F629にも対応しているし、 全PICとも2kワードまでは制限無し。タイマー0を使った割り込みで出力ピンのLOW-HIGHを反転させるという ロジックを組んでみました。
ここで一つ問題が。MIKRO-BASICを使って内蔵4MHzの発振器では、出力周波数を20000Hz以上に 持っていくことが出来ないことが判明!割り込み関係のオーバーヘッドが意外に大きいようです。このへんの事情は その他の高級言語でも同様でしょう。まぁ、セラロックなどの部品を増やすのもイヤなので、ひとまず無視して先に進めます。 (いざとなればアセンブラ使えばいいし)
160u秒、80u秒、40u秒の各タイミングで出力を反転させるように3種類のプログラムを用意してみました。 出力周波数で言うとそれぞれ3125Hz、6250Hz、12500Hzですが、タイマー0を使用している都合 カウンタ値の再設定に時間を要するために実際は若干低い周波数になります。
私の手元にあるMIKRO-BASIC(フリー版)の環境では割り込み機能のシミュレーションが対応されてないので、 シミュレータ上で正確に動作クロックを数えることができませんでした。作りかけのネコロジー を使って計測してみたところ、上記より1~2割低い周波数になっているようです。
まぁ、短くて単純なプログラムなので、皆さんお好きなように作り変えて使って下さい。 ちなみに20000Hz以上の発振をさせるには、最低でも毎秒40000回以上でLOWとHIGHの切替が必要に なりますが、PIC内蔵の4MHzクロックならば100クロック=25命令(割り込みやスタック退避も含む)以内に 1回以上切り替える必要があります。この周波数域になると、高級言語+タイマー0割り込みでは少々荷が重いようですね。
以下にプログラムを貼っておきます。右クリックで保存して、MIKRO BASICでコンパイルして使ってください。
- PIC12F629用 負電圧発生用プログラム(MIKRO BASIC)
- PIC12F629用 負電圧発生用HEXファイル(12500Hz用)
- PIC12F629用 負電圧発生用HEXファイル(6250Hz用)
- PIC12F629用 負電圧発生用HEXファイル(3125Hz用)
- MIKRO BASIC(フリー版)ダウンロードページ
プログラム中のコメント文に、各周波数用の修正方法を記載してあるので、適宜プログラムを修正しコンパイル してからお使いください。HEXファイルは、3種類の周波数を載せておきました。
その他について
あと、今回使用した電源は、どこのご家庭にもある秋月の5Vスイッチングアダプターです(^_^)。
テスターで測ったら 出力電圧は5.17Vでした。5Vよりちょっと高いですが、この電圧で安定化するように 制御されてて調整のしようが無いので、このまま実験に使いました。
一通り実験して、実用的な出力電圧、出力電流が取り出せるケースが明らかになったところで、その効率の良いケースを用いて 以前の実験のようにボルテージフォロア回路でビデオ信号を出力し、ノイズやジッタの現れ方を検証します。
テスト結果
バリエーションはいくらでも考えられるので、ある程度端折って実験してみました。個人的に興味のあったパターンのうち 30個を選んでいます。以下に実験結果を纏めます。
(1)出力電圧(表形式)
各条件ごとの出力電圧を以下の表に纏めます。縦軸はダイオード種類、周波数、コンデンサ容量を示しています。 横軸は負荷抵抗です。数値は各条件毎の出力電圧で、単位はV(ボルト)です。負圧なのでマイナス値になっています。
条件 | 1kΩ | 470Ω | 300Ω |
Schottky barrier 3125Hz 33uF | -4.45 | -4.22 | -4.00 |
Schottky barrier 3125Hz 10uF | -4.39 | -4.09 | -3.83 |
Schottky barrier 6250Hz 33uF | -3.98 | -3.37 | -2.88 |
Schottky barrier 6250Hz 10uF | -4.43 | -4.18 | -3.94 |
Schottky barrier 6250Hz 0.1uF | -2.91 | -2.06 | -1.59 |
Schottky barrier 12500Hz 33uF | -1.58 | -1.35 | -1.18 |
Schottky barrier 12500Hz 10uF | -2.63 | -2.30 | -1.99 |
Schottky barrier 12500Hz 0.1uF | -2.25 | -1.48 | -1.10 |
silicon diode 6250Hz 33uF | -3.24 | -2.73 | -2.33 |
silicon diode 6250Hz 100uF | -3.25 | -2.74 | -2.34 |
なお、コンデンサーは0.1uFを除きすべてアルミ電解コンデンサーです。
(2)出力電圧グラフ
上記の(1)で求まった数値をグラフにプロットしてみました。負圧(マイナス値)のままだと解りにくいので、 プラスに変換してプロットしています。横に長ーい画像になったので縮小表示してます。別窓で大きく表示しなおすか、 画像を一旦ローカルに保存してからご覧ください。
(3)出力電流グラフ
出力電圧を負荷抵抗で割って電流を求め、それをグラフにしてみました。
(4)オペアンプを通したビデオ信号出力について
上記までの結果のうち、4V近い出力が得られているパターンの中から3125Hz・33uFのケースを負電源に 採用し、ビデオ出力の実験を行ってみました。
接続の条件は以下の通りです。
- 正電源:秋月の5Vスイッチングアダプタ(5.17V)
- 負電源:PIC12F629を3125Hzで発振し、ショットキバリアと33uFのコンデンサで生成
- オペアンプにはLM6364をボルテージフォロアで使用
- ドットイーターの映像を75Ωの抵抗で入力して、オペアンプからの出力をTVに接続
で、その映像出力の結果です。まずはオリジナルの映像をビデオキャプチャーで取り込んだ映像を。映像の左上部分だけを 切り出した画像です。
次に、今回の負電源及びオペアンプを通した映像です。同じ部分を切り出した映像です。
普通に映像が表示されているのお判りいただけると思います。(≧v≦)σ
ほんの少し輝度が下がっているようですが、その原因は良く判りませんでした。TV内部の75Ω抵抗と 今回使用した75Ω抵抗に若干誤差があるのか、それともブレットボード上の長い配線を通るうちに信号が 劣化したのか… 理屈から考えると、負電源自体が悪さしているとは思えないのですが…
少なくとも、画面上では(微妙な輝度の差を除いて)実質的な違いがあるようには見えませんでした。画像が 歪んで見えるとか、ノイズが乗ってしまうとか、そういうことはありませんでした。
そうそう。よーく眺めると、ドットやパワー餌の部分に微妙な違いがあるように見えますが、これは 背景表示器の映像がスプライト映像に対して元々ジッターが あるからです(キャプチャーのタイミングでたまたまこうなっただけ)。 スプライト表示器で表示している「モンスター」の部分を 見ていただけば、歪みが全く無いのがお判りいただけると思います。実際テレビ画面で見える映像もそんな感じです。
なお、オペアンプにかかる負電源の電圧を動作中に計測したところ、およそ-4.2Vでした。オペアンプ自体は ほとんど電流を食いませんし、75Ωのドライブも、ほとんどは正電圧の領域で消費されるはずなので、 負電源からの流出電流は軽微なのでしょう。
テスト結果のまとめ
出力電圧の上位に挙がったのはショットキバリアダイオードを用いたパターンでした。特に、そのうち 周波数・コンデンサ容量の組合せが「3125Hz・33uF」「6250Hz・10uF」「3125Hz・10uF」 の組合せについては、負荷300Ω時に13mA程度の電流を取り出せています。
一方、コンデンサ容量が0.1uFでは総じて成績が芳しくありませんでした。
また、12500Hzのパターンについては、総じて成績は低迷しているようです。
33uFと100uFの両方のパターンはシリコンダイオードでしか実験してませんが、100uFに 容量をアップしたからといっても成績はほとんど変わらず仕舞い。また、ショットキバリアの6250Hz では33uFよりも10uFの方が沢山の電流を取り出せていることを鑑みると、容量を大きくすることと 出力電流の向上には一概に関連性が無さそうに見えます。
あと、今回の負電源を使ってオペアンプを稼動しビデオ信号を処理してみた結果、オリジナル映像に対し 若干輝度の変化は見受けられましたが、ノイズやジッターは見受けられませんでした。また、以前 汎用オペアンプの実験でLTC1144を使った際の映像 と比較してもクオリティーに違いは見られませんでした。
考察
以上の実験結果を受けて、個人的な印象をまとめてみたいと思います。
コンデンサー容量について
実は、事前に考えていたのは、「容量を大きくすれば取り出せる電流が大きくなる」という予想だったのですが、 実際の実験結果では一概にそうとも言えず、評価に困っています。理解できるだけの知識も技術も無いですし…
コンデンサ容量と出力電圧をグラフにしたら、綺麗な傾向が見られるだろうと思っていたんですけどねぇ…(TへT)
ただ一ついえるとすれば、コンデンサのESR等も複雑に影響して、周波数に最適なコンデンサの容量が存在するらしい、 ということでしょうか。コンデンサのバリエーションもコンデンサの種類も少ないので、コンデンサー容量について 評価するには少々データ不足の感が否めません。
まぁ、0.1uF程度まで小さくすると取り出せる電流が小さくなることは判ったので、小さいよりはある程度の 大きさがあったほうが良さそうではありますね。
555等を使ったチャージポンプ電源のさまざまな実例を見ると、もう少し小さ目(2.2uFとか4.7uFとか)のを 使っているものが多い様なので、いつか時間が出来たらそこらへんも実験してみたいなぁ、と思います。 あと、ESRがもっと小さいOS-CONについても比較が出来ればなぁと思います。
ダイオード種類について
予想通り、シリコンに比べてショットキダイオードの方が電流を何割か多く取り出せるようです。
通常のシリコンダイオードに比べて、ショットキバリアダイオードの単価はそれほど高いわけではないので、 シリコンダイオードのバリエーションを沢山試すよりは、早々にショットキバリアに注力した方が良いかと 判断し、シリコンダイオードのバリエーションは少なく留めました。
周波数について
周波数については、高ければ良いとも低ければ良いとも言えないような実験結果ですね。やっぱり評価に困るのですが、いずれにしろ 各条件に最適な周波数というのが存在するようです。なお、数kHzレベルの周波数であればある程度大きい電流が 確保できている感じですが、10kHzを超えると効率が悪くなるように見えます。これはやはりコンデンサーの ESR等がが影響して急速なチャージが出来てないのかなぁ…想像の域を出ません…。ざんねん。
本当は、可聴域である20kHzを超える周波数で実用的な電流が得られるかを試してみたかったんですが、 4MHzのマイコン+BASICでは少々無理があったようです。いずれ、アセンブラを使って20kHz以上 の周波数でテストしてみたいと思います。ただ、LTC1144にも「ブーストモード」(可聴域よりも 高い周波数で発振させる)という機能がわざわざ別途設けられていることを考慮すると、現代の電子デバイスではもしかしたら 可聴域以上の周波数では効率が落ちるというような話があるのかも知れません。
12500Hzで成績が芳しく無かったのは、今回用いたアルミ電解コンデンサに問題があるのか、 それともコンデンサ容量に問題があるのか、どこに問題があるのか正直良く判ってませんが、今回の部品構成では ある程度の周波数を超えると上手くコンデンサへのチャージが出来ていないような気がします(根拠レスですが)。
いずれにしても、今回は可聴域以上の周波数(20000Hz以上)での発振を実験できませんでした。 ヘッドホンアンプなどへの応用は、多分このままでは実用には向かないでしょう。今後の課題です。
取り出せる電圧と電流について
今回はPICの出力端子を電源に応用したので、そもそも5Vを共用するしかない(555などは15V程度まで使える) ということで電圧の点では初っ端からハンデを背負っているわけですが、実験をしてみると意外に大きい電圧、大きい電流が取り出せる ことが判ってビックリといった感じでした。アルミ電解コンデンサでも300Ω負荷で約4V、13mA取れますからね。
グラフから察するに、もう少しくらい大きい負荷(小さい抵抗値)を掛けても、そこそこの電圧、電流が取り出せるのではと思います。 さらに、OS-CONを使ったらもっと大きい電流が取り出せるかも知れませんしねぇ。いずれにしてもマイコンとオペアンプを 繋いで使うのであれば、マイコンとオペアンプの電源は共用せざるを得ないでしょうから、今回の回路は意外に役立つかも知れません。
駄目元でやってみた企画だったんですが、意外にいい結果が得られて、個人的にはちょっと満足です。( ̄ー ̄)σ
一方、マイコン自体の電源がデータシート上5.5V以内なので、(コンデンサーの電圧降下も考慮すると) せいぜいマイナス4V程度の負圧しか作り出せないのが難点でしょうか。
でもまぁ、マイコンとオペアンプを組み合わせて使う用途といえば、”センサー素子の微小電圧を増幅してAD変換” とか、”マイコンを使ったビデオ出力”あたりがせいぜいでしょうから、今回の電圧でも充分だろうと思います。 そもそもマイコン用電源にパワーアンプを繋いでスピーカーからガンガン音を出そうって人はいないでしょうし。
電流についてですが、LMC555はデータシート上50mAしか取り出せないようなので、LMC555を使った チャージポンプに比べれば取り出せる電流は今回のPIC以下になると思います。LM555ならデータシート上 200mAなのでもう少し取り出せるのかも知れませんが… (8ピンPICは上述の通り125mAです)
出力電圧は安定化されていないので、負荷の増減で出力電圧が変化してしまうのが玉に瑕…。
ビデオ信号出力結果について
今回の結果を鑑みると、それなりに実用に耐えると思われます。
また今回の結果(出力電圧でも約4.2Vをキープ)から想像するに、オペアンプ3つ程度 (RGBのビデオ出力用途を想定)なら同様に多分に耐えうるだろうと想像されます。
部品代について
方式 | 専用IC | タイマーIC | 8ピンPIC |
発振回路 | LTC1144 | LMC555 | PIC12F629 |
コンデンサ | 10uF×2個 (容量はデータシートに因る) | 1000pF 0.1uF 2.2uF×2 | 33uF×2 (もしくは10uF×2) パスコン |
ダイオード | 外付け不要 | ショットキ×2 シリコン×1 | ショットキ×2 |
その他 | - | 10kΩ×2 | - |
合計金額 | 約320円 | 約130円 | 約180円 |
外付け部品個数 | 2個 | 9個 | 5個 |
だいたい予想通り、555<PIC<専用IC といった感じです。555に比べて約50円増し程度。 専用ICに比べれば半値近いコストです。期待通りの結果です( ̄ー ̄)
外付け部品点数については専用IC<PIC<555といった感じです。
なお、部品価格は秋月と千石の店頭価格をベースに計算しています。
その他
チャージポンプもそうですが、スイッチング系の電源と言えばいつもリプルの問題が取り上げられています。 が、私の手元にはリプルを可視化して調べられるほどの高精度な計測機器(オシロなど)がありません。
計測機器が無い状態でテストすること自体がそもそも無謀ではありますが、でもまぁ、リプルの問題は 専用ICでも似たような状況なのかと思います。
リプルをある程度軽減するには、インダクタやパスコン、ローパスフィルターなどを噛ませれば少しはマシに なるのかも知れません。
そのうちもう少しいいオシロを手に入れたいとは思いますが、いつになるかは判らないので、もし ご興味が湧いた方は、実際にオシロで測った結果を教えていただければ幸いです。
あと、一つ気になっているのは、MICROCHIP社の人が「マイコンをそんなことに使うなー!」と怒らないか 心配です…。まぁそれにしても、奇想天外なことを思いつくもんだと我ながらあきれました。普通ならマイコンに 供給する電源をどうするか考えるものですが、そのマイコン自体をパワーソースにしてしまうとはねぇ…まるで「電気力発電!」…。
今後の展開について
昇圧回路への応用について
チャージポンプ回路を用いる応用例としては、負圧生成だけでなく昇圧回路も存在します。
昇圧回路についても、理屈の上では今回の8ピンPIC+今回のプログラムで実現できるはずです。
この昇圧回路への応用についても別途調べてみようと思っています。(のちほど別ページに纏めます)
リプル対策について
秋月でLTC1144を購入した時に付いていたデータシートに、リプル対策用にこのような回路が描かれています。 (スキャナー使うのが面倒だったので、デジカメ使いました)
この回路は、2つのポンプ(左側の2個の10uFコンデンサ)を交合に動作させて、キャパシタ (右側の20uFコンデンサ)に連続的にチャージを行いつづけることによってリプルを減少させよう という意味です。
ポンプが1個の場合はデューティー比が50:50なので半分の時間はチャージを行ってますが、逆にいうと 半分は働いていないわけです。この残り半分の時間をもう1個のポンプを併用することで埋めているわけです。
上手い方法ですね。完全にリプルをゼロに出来るわけではありませんが、軽減することが出来、また出力電流を大きくする 事にも寄与するはずです。
ちなみにその2つのポンプを丁度逆のタイミングで動作させるために、シンクロ機構として排他的NOR回路が 別途必要になるようです。すると、LTC1144を2個に加え排他的NORの回路も必要となり、 合計で3つのICが必要になることになります。
えぇー?3つも使うの???
高いし、部品が多いし…。もっといい方法が無いかなぁと、いろいろ考えてみました。↓こんなのはいかがでしょう?
発振器内蔵の18ピンPIC(この回路図は16F628使用を想定)を使って、PORT-A、PORT-Bの それぞれをHIGHとLOWを交合に切替え、それぞれをポンプとして使う作戦です。これならICは1個だけで済みます。 プログラムもシンプルで済むはずです。
取り出せる電流についても特筆すべきことがあります。8ピンPICではIC全体から125mAしか取り出せず、 そのうち半分の時間はチャージが出来ないという仕様でしたが、16F628などの18ピンPICならIC全体の 流入、流出電流はそれぞれ200mAなので、PORT-A、PORT-Bを交合に切り替えてポンプ動作させれば、 最大で200mAの電流を供給できる計算です。(実際はこんなに供給できないはずですが)
上の回路ではRA5をリセットピンに充てているので、実際は25mA×7=175mAが最大になりますが、 RA5も出力ピンに設定すれば200mAのスペックになります。が、どちらかと言うと、両PORTの出力 本数を7本に揃えて、残った1本のピンは周波数切替用にするなど機能性を考えた方が現実的かもしれません。
まだテストはしていませんが、どの程度の電流が取り出せるのかは見ものです(リプルの波形は 目下、私の機材では計測できないので…)。なお、左側2個の電解コン容量に対して、右側1個の電解コンの容量は2つ分 と釣り合いを取る必要があります。LTC1144用の回路と同様です。
例によって、MICROCHIP社の人が読んだら怒り出さないかが心配ですが…
そもそも今回の実験の課題について
今回の実験で、コンデンサ容量、コンデンサの種類、発振の周波数について実験バリエーションの不足が 感じられる結果になったと思っています。
いますぐに継続して実験する時間は無いので、そのうち時間が出来たら、もしくは必要に迫られたらまた 実験を進めたいと思います。
以上で、ひとまず今回の実験を締めたいと思います。
追伸
コンデンサの種類、容量、周波数のバリエーションについて、 OS-CONを使って、さらに高周波で追試を行いました。 クリックして追試のページに移動してください。