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8ピンPICで作った電源で ヘッドホンアンプを試聴

前書き

経緯

8ピンPICの負電源。せっかく100kHzにしたので、オーディオ用途に向くのかどうか試してみたくなりました。 一般的なオーディオ用オペアンプを使ったヘッドホンアンプ回路を用い、どの程度の音が聴けるのかを簡単にテストしてみました。

そういうわけで、負電圧の生成にはOS-CONと8ピンPICを使った 「負圧回路の追試」で作った負電圧生成回路を使いました。市販ミニコンポ(DENON)のイヤホン端子出力とも比較して みましたが、期待以上のノイズの小ささが確認出来ました。思いつきで作った8ピンPICの負電源ですが、意外なほどいい感じです。

というわけで、この負電源をオペアンプに組み合わせて、私の耳で聞いた結果を簡単にまとめておきたいと思います。

私の耳について

主にノイズの大きい/小さいについて触れたいと思いますが、オペアンプ毎に結構音質自体が違っていたので、 私の耳で判る範囲で、音質についても少し触れておきたいと思います。

ただし、私の耳の確からしさについては簡単にご説明しておきたいと思います。正直、オーディオマニアの方々には 遠く及ばない耳しか持ってません。

私は子供の頃より故長岡鉄男氏の作られた数々のバックロードホーンに憧れがあったため、後に彼の設計思想を汲んだ バックロードホーンスピーカーを設計、製造したことがあります(今も愛用中です)。が、耳の良し悪しは別。 正直言ってオーディオマニアの方々には遥かに及ばない程度の耳しか持っていません。所詮その程度の評価だという ことであらかじめご了承ください。

あと、いわゆるコンシューマーのオーディオ機器にもてはやされているような「ドンシャリ」の音…つまり 低音がドンドン鳴って、高音がシャリシャリ鳴る音、そういう音が嫌いで、耳が疲れて長時間聴いていられないという 耳の持ち主です。(そういう意味ではDENONのコンポの音は耳に合います。買うときに、ビックカメラで 店員さんを1~2時間足止めして、店頭に並んでいたコンポを片っ端から機器比べして決めました。)

独断と偏見に満ちたレビューということであらかじめご了承ください。

実験方法(材料)

電源回路

オペアンプのドライブの為に、正電源、負電源の両方が必要になります。正電源については、秋月電子の スイッチングアダプター5Vと3.3Vを使用しました。単なるACアダプターと異なり50Hz・60Hzの ノイズは入りにくそうだし、多分可聴域ではスイッチングさせていないでしょう(期待の範疇ですが)。

負電源については、負電源回路の追試の回路を踏襲し、 100kHzで発振させ、OS-CONの10uFのものとショットキバリアダイオードを使用しました。

なお、稼動時の負電源は-4.37Vの出力がありました。結構な音量で出力させましたが、あまり負荷電流は 大きくなかったようです。

オペアンプ

手元にあるオペアンプのうち、2回路内蔵の以下のオペアンプを使ってみました。

(比較対照)DENON UD-M30のイヤホン端子出力

回路図

回路図としては、こちらのサイト の(a)の回路図を踏襲し、電源回路だけは上図のとおりとしました。

ブレットボードに組み込みました。イヤホン端子やRCA端子は、ブレットボードに接続できるブレットボード用の ブツを以前作ったので、それを利用しました。

回路図は以下のとおりです。といっても、オリジナルとの差は電源回路だけです。ダイオードはショットキバリアダイオードを、 10uFの電解コンはOS-CONを使用しています。

(クリックで別画面に開きます)

(訂正:掲示板でオペアンプの入力端子+-が逆とのご指摘をいただきましたので訂正しました。ありがとうございます)

回路図に描きませんでしたが、各オペアンプ及びPICには、パスコンとしてフィルムコン0.1uFを使用しました (たまたま手元にあったので)。あと、並列に低ESR電解コン10uFを使用しました。

そうそう。可変抵抗ですが、ブレッドボードに使用できるAカーブの可変抵抗が無かったので、 Bカーブ品を使ってみました。音量の調整が微妙で、ちょっと動かすと音量が凄く変わっちゃったり、 音が大きすぎて音が割れちゃったり…と、なかなか調整が微妙で難しいです。出来るならやはりAカーブのを 使う方がよさそうです。

接続機器、音源ソース

入力のRCA端子には、DENONのミニコンポUD-M30のLINE出力に接続しました。

ヘッドホン出力端子には、RIOのLIVEgear(FOSTERの388404のOEM)を接続しました。

音源ソースには、お好みのCDからインスツルメンタル(バイオリン系)を1枚、女性ボーカルもの(ポップス)を1枚、 フュージョン(エレキギターメイン)を1枚、ハードロックを1枚の計4枚を取り出して聞き比べてみました。

実験結果

ノイズについて

DENONのミニコンポUD-M30のヘッドホン端子で聴いた音と比べると、ホワイトノイズの量は極めて少なかった といえます。(例外としてはLM358。このアンプだけは、正直ノイズも歪みもひどくて、聴けたものではなかったです)

LM358以外のオペアンプについては、UD-M30のヘッドホン端子出力よりもノイズの量は小さかったです。 っていうか、ミニコンポのヘッドホン出力って、この程度のものなのねぇ…。

音質について

使用アンプ ノイズ 音質 その他の印象 補足
LMC662 ホワイトノイズかなり多い
50Hz電源ノイズを拾っている?
低、中、高音のバランスがとてもいい 切れのいい音 単電源対応オペアンプ
NJM5532DD ホワイトノイズ少しあり 一番バランスいい
分解能高い
すこしモヤがかかったような印象 もう少しノイズが小さければ…
NJM4580DD ホワイトノイズそこそこあり 高音が強く出る 音量によっては高音が割れ気味の傾向 一般評価では悪くないようですが、高音がちょっと耳障り
NJM2114DD ホワイトノイズはほとんど目立たない 低、中、高音のバランス悪くない
クリアで切れのある音
破綻の無い自然な音 最も私の好みの音
LM4562 ホワイトノイズほとんど目立たない もっとも艶かしい音
低、中、高音のバランス良し
NJM2114よりも少し高音がきつい
分解能非常に高い
切れのいい音
2番目に好みの音
もう少し高音が抑えられていれば…
LM358 ノイズもひずみもひどくてお話にならない 音楽として聴けない オーディオ用途として全く向かない 単電源のいわゆる汎用オペアンプ

さすがにヘッドホンなので、どのアンプも低音については必要充分という音量が得られました。

使用するオペアンプによって、高音の音量がずいぶん異なるものだなぁ…と、感心しました。

単電源対応(RAIL-TO-RAIL)のオペアンプは、ノイズの大きさなどの点では両電源タイプ と違って、妥協の産物なのかも知れませんね。

ミニコンポとの比較

DENON UD-M30のイヤホン端子出力に、同じヘッドホンを繋いでみました。

さすがにDENONのコンポ。チューニングが秀逸です。低、中、高のバランスは上記のオペアンプと 比較すると最も私の耳に合って好印象です。とても聴きやすいバランス。

ただし、ホワイトノイズがかなり大きいです(LM358ほどではありませんが)。あと、分解能の細かさ と言う点では、NJM2114DDやLM4562よりも劣る印象です。

多分、一般的なミニコンポレベルならこの程度なのでしょう。普通はヘッドホンじゃなくてスピーカーを 繋いで聴くものですからねぇ…

考察

ノイズについて

市販コンポのノイズが大きすぎるのかどうか判りませんが、少なくとも市販コンポのヘッドフォンアンプに 比べたら、けた違いのノイズの小ささでした。

秋月製スイッチングアダプタのノイズと、負電源に使ったPIC12F629のノイズでは、どちらが 大きく表面化していたのかは判断に困るところです。電池でも試してみればよかった…。

いずれにしても、使うオペアンプによってノイズの乗り方に大きな差が生じていることが判り、 その大きさは電源に因るものよりも大きく影響していることが今回の試聴でわかりました。

つまり、オペアンプの個体差よりも電源ノイズの方が小さいといえると思われます。

消費電力について

発音中に、オペアンプの負電源にかかる電圧をテスターで計測した結果を見ると、電圧降下が ほとんどありません。つまり、ヘッドホンアンプを駆動する程度であれば、充分な電力量を 供給できると考えて良さそうです。

また、PIC自体が消費する電力は微々たる物なので、電池駆動に使用しても充分 実用になるかと思います。

音質について

負電源生成回路とは直接関係ないことですが、オペアンプによって音色にずいぶん差異が生じる モノだなぁというのが正直な感想です。

逆にいうと、そういう差異を聴き取れるだけのスペックを 電源が持ち合わせているということかもしれません。

総合評価

相変わらず、PICの出力端子をこのように並列してしまって安全なのかどうか判りませんが、 音質の点で考えた時に、安価に実現できる負電源という観点ではある程度実用に足りるものと考えて良さそうです。

なお、オーディオ関係でかなり研究が進んだサイトを発見しました。

ZnO's Techincal Laboratoryです。 オーディオ関係の凄く本格的なサイトです。ご一読あれ! (私にもアナログ回路についてこんな様な知識が あったらいいのになぁ…

以上でこの実験を締めくくりたいと思います。