PIC AVR 工作室->TopPage->実験くん->TRで負電源

トランジスタで作る 負電源

以前、8ピンPICを使って負電源回路OSコンを使って負電源回路を作りましたが、 PIC内蔵のバッファ回路に鞭打ってドライブしちゃってるので「混ぜるな危険」な匂いがプンプン。 で、混ぜても危険じゃない負電源回路を考えることにしました。

マイコンとオペアンプを同居させたい時に必要となる負電源。それをマイコンの余っているピン…できればPWM…を流用して、 ちゃんとしたドライブ回路で負電圧を生成する電源回路を組んで見ます。今回は混ぜても危険じゃありません…。多分…。(^_^)

方針

前回の問題点

前回までは、5V電源で8ピンPICを適当な周波数で発振させて、それをショットキバリアダイオードとコンデンサを使った チャージポンプ回路を通し、電圧を反転させてしまおうという作戦でした。

で、それなりの電流が取れることは判ったんですが、出力ピンをそのまま5本束ねているのはやっぱり超危険だし、 瞬間的な流出入電流は定格を超えているかもなぁ…と。心配。

ってわけで、ちゃんとデータシート通りに安全な範囲で使えるバッファー回路を考えてみます。

今回の方針

まず、瞬間的な流入/流出電流についても心配なく使えるバッファー回路をちゃぁんと組んで、そいつをマイコンから ドライブすることにしたいと思います。そうすれば、8ピンPICを負電源専用に組み込まなくても済むし…。ますますマイコンと オペアンプの相性が良くなるのでは?と期待。

マイコン側に必要な機能は単にデューティー比50:50のパルスを発生させるだけ。マイコン自体からは電流も殆ど流さないので、 普通のマイコンなら何でも大丈夫です。マイコンの余っているPWM出力ピンなどを1ピンだけ流用することを想定してます。

問題のバッファ回路ですが、ひとまずトランジスタを2つ使ってオーソドックスなプッシュプル回路を組むことにします。 本当は、大電流が扱えるようなエンハンスト型MOS-FETトランジスタを使うほうがいいんだろうと思うんですが、 まずは2SC1815+2SA1015のような、どこのご家庭にも死蔵されているバイポーラトランジスタのコンプリメンタリペアを使ってみます。 手に入りやすいし、なにより安上がりだからね…。

で、マイコンから出力したパルスをこのプッシュプル回路を通して出力するんですが、プッシュプル用のトランジスタには制限抵抗を きちんと登載して、データシートの定格内で使うことにします。

例によってその後続にはチャージポンプ回路を繋いで負電圧を生成するわけですが、使用するダイオードとコンデンサは これまでの経験を踏まえて、適当に効率の良さそうなものということでショットキバリアダイオードと東信工業の低ESR電解コン10uFをチョイス してみました。マイコン以外の外付け部品は多分合計100円位。超安上がり!

実験の前に…情報整理

せっかく実験するからには少しは意味のある内容にしたいので、動作原理などを振り返っておきつつ、 効果的なバリエーションを効率的にテストすることにします。

プッシュプル回路

NPNとPNPのバイポーラトランジスタとか、N-MOSとP-MOSのFETトランジスタを直列に繋いで、 制御信号に従ってHIGHなら電流が取り出せ、LOWなら電流を引き込めるようにした回路って感じでいいでしょうかね? (わたしはそんな風に理解してます)

回路図上縦にトランジスタが並ぶ形で書かれるので、その見た目からトーテムポール回路とかとも呼ばれます。

バイポーラトランジスタで作ったプッシュプル回路を記します。

通常はこういうバッファ回路がマイコンの各出力端子に組み込まれているので、前回はその内蔵バッファに鞭打って使って いたわけですが、当然マイコン本来の使い方ではないので、今回はちゃんとバッファ回路を外付けで組むわけです。

左側からHIGHかLOWの信号を入力したときに右側から論理を反転して出力するので、機能的にはインバータです。 LOWなら上のトランジスタだけがONになり、出力端子からはHIGHが出力されます。ただし、電流がいっぱい取り出せます。 HIGHが入力された時は下のトランジスタだけがONになり、出力端子からはLOWが出力されます。こちらも電流がいっぱい引き込めます。

このようなバッファを構えた出力形式の比較対照として、オープンコレクタ/オープンドレイン 出力 (の出力を数kΩ程度の抵抗通してVccに繋く使い方)と比較してみます。オープンコレクタ/オープンドレインは 簡単に言えば1個のトランジスタを使ったインバータ回路で、出力側を抵抗を介してVccに繋いで使います。機能的には同じインバータなわけです。

オープンドレイン、オープンコレクタは、構造上LOW出力の時に電流をたくさん引き込むことができる訳ですが、 HIGHの時にはこの数kΩの抵抗を通してから出力するので殆ど電流が取り出せません。 たくさん取り出そうとすると電圧降下が大きくくなっちゃいますからね。

で、流入/流出の両方の電流を大きく取るためにNPNとPNPトランジスタ(もしくはN-MOSとP-MOS) をペアにしてバッファとして使うわけです。

貫通電流

さて、バッファ回路を実際に組む場合には解決しなくてはいけない問題があります。貫通電流のことです。

プッシュプル回路の2つのトランジスタは、理想状態だけ考えればHIGH出力とLOW出力の2つの状態しか存在しないわけですが、 微小な時間で見ると、その中間状態が存在します。中間状態では両方のトランジスタが通電状態になったりします。 その際、もしこの図のような抵抗が組み込まれていないと、2個のトランジスタを通してVccとGNDが短絡することになります。 その時にズドンと流れるのが貫通電流です。

もし制限抵抗もない状態でトランジスタが両方ONになるとVccからGNDに思いっきり大電流が流れてしまい、当然定格をオーバーしてしまいます。 なので両方のトランジスタには制限抵抗を設けておき、両方のトランジスタがONになっても定格内の電流で済むようにしておきます。

本当は、この抵抗は小さければ小さいほど電流がたくさん流せるわけですが(この抵抗が出力インピーダンスになるわけなので)、 今回は各トランジスタのデータシートとにらめっこしながら、瞬間的にでもトランジスタの定格を超えないように余裕を持って設定することにします。

トランジスタのパラメタについて

今回の負電源の性能を大きく左右するのはこのトランジスタで作るバッファの回路な訳ですが、 そのバッファの性能を大きく左右するのはいうまでも無くこのトランジスタの能力と言うことになります。 今回特に大きく影響するであろうパラメタについて触れておきたいと思います。

Ice

コレクタからエミッタに流すことができる最大電流です。抵抗の設定値にも大きく影響するので、 今回最も重要なパラメタだと思います。

Vce(sat)

コレクタ・エミッタ間に大きな電流を流した時に、コレクタとエミッタの間に生じる電圧降下です。上下に構える2つの抵抗の分とあわせて このトランジスタのVce(sat)で生じる電圧降下も性能悪化の原因になります。小さい方が有利です。

hFE

トランジスタの電流増幅率です。今回はコレクタ電流を最大付近に取りたいわけなので、ベース電流は飽和状態にしたいわけです。 なので、ザックリIceをhFEで割った値がベース電流ってことになるかと思います。あまりhFEが小さいと、マイコンから 引き出さないとならない電流が大きくなり、消費電力的に非効率なので、hFEが適度に大きいものが必要です。

同じ型番でもグレードによってhFEが異なるので、できるだけhFEが大きいグレードの方がよいでしょう。 またIceを限界付近まで大きく取る場合hFEは小さくなっていく傾向が見られるので、 データシートを見てIce付近のhFEを確認しておく必要があります。

入手性

データシートには書かれる事がない、でも重要なパラメタです。値段とか店頭在庫とか、その辺りです。 滅多に手に入らない部品や高価すぎる部品だと、どんなに高性能に作っても意味ありませんからね… 安くて、入手性がよくて、しかもコンプリメンタリペアがそろえやすいモノを選びます。

その辺りを考慮に入れて、回路に実際の部品をぶち込んでいきたいと思います。

実験の方法

回路図について

これまでの方法とちょっと違うのは、マイコンの内蔵バッファ回路をそのまま使わずに、外部にバッファを設けていることです。 それ以外については、前回とほぼ一緒です。

図の右側にあるゲジゲジがマイコンです。数十Khz~二百Khz程度でデューティー比50対50の信号が出せるなら何でもいいです。

マイコンの余った出力ピンを流用することを想定しているので、今回はVcc=5Vと置くことにします。

ちなみに、マイコンとバッファ回路の間の抵抗はベース電流を制限する制限抵抗です。hFEとご相談のところですね。 トランジスタの上下2個の抵抗はコレクタ電流を制限する抵抗です。ここが小さい方がたくさん電流が取り出せるわけです。 Iceが大きく流せるトランジスタなら小さい抵抗値を使うことができるわけですね。

ダイオードは、ショットキバリアの代わりに普通のシリコンダイオードを使うと、効率が凄く悪くなります。ご注意。

コンデンサは、ESRの小さなモノがいいです。今回は東信工業の低ESR電解コン(よく見かける茶色に白帯の安い電解コン) 10uFを使いましたが、もう少し小さ目の容量でも多分大丈夫と思います。あと、OSコンとか使うとちょっとだけ効率が良くなると思います。 逆に普通の電解コン(黒に白帯の電解コン)だと効率がかなり悪化します。

使用プログラム

今回はPIC12F629を使ってみました。(っていうか前回と一緒ですね)

適当にでっち上げたプログラムを使います。適当なピンから125Khzのパルスを吐き出しています。適当に弄って使ってください。 ちなみに、このプログラムはCPLDの動作確認用にゆっくりとしたクロックが欲しくなったときに、8ピンのPICを使って 125khzの方形波を出力させるプログラムを作ったやつがたまたまPIC12F629に書き込んだままになってたので、 面倒だったのでそれを流用しただけです。あまり深い意味はありません。MP-LABでアセンブルできます。

クリックしてダウンロードしてください。

多分、数十khz~この程度の周波数で使うのがよろしいかと思います。前回の実験で使ったプログラムとかから お好きなものをチョイスしてください。(あまり遅いと効率悪いし、あまり速いとショットキバリアダイオードでも 電圧反転時のロスが大きくなっていく気がします)

実験に使用するトランジスタとスペック

今回使用するトランジスタです。NPN、PNPとも入手しやすくて、袋売りで安く手に入るものを選びました。

性能に一番大きく影響するパラメタはIceかと思われるので、この点について広いバリエーションを設けました。

PNP NPN Ice Vce(sat) hFE grade
2SA1015

2SC1815
-150mA
150mA
-0.3V
0.25V
25
25
GR
GR
2SA817

2SC1627
-300mA
300mA
-0.4V
0.5V
40
40
Y
Y
2SA950

2SC2120
-800mA
800mA
-0.7V
0.5V
35
35
Y
Y

一番上のペアはお馴染みのミス&ミスターバイポーラ、2SC1815と2SA1015です。残りの2ペアもポピュラーなモノでしょう。 秋月でも袋売りがあるので安価で手に入りますし、千石等で1個単位でも手に入ります。

ちなみに、各トランジスタのVce(sat)は最悪値です。hFEはデータシートに記載されている大電流時の最悪値ですが、 これはグレードがOrange用の数値だと思うので、YellowやGReenならもう少しマシだと思われます。

トランジスタ周りの抵抗計算

各トランジスタペアについて、データシートのスペックを元に抵抗値を求めます。

ベース電流は「コレクタに流す電流÷hFE」なので、Ice÷hFEより多く流せば良いのですが、省電力化やマイコンへの負担を 考慮すれば少ないに越したことはありません。hFEの最悪値を元に丁度いいギリギリの値を設定します。 ただし、Iceが大きい2SA950・2SC2120は最悪値で計算すると相当電流を流さないとならないので、 データシートのグラフから読み取ったhFE≒80程度で計算することにしました。 (この値はOrangeで25℃で約800mA取った時の場合ですが、Yellowならもう少しマシだと思うので、とりあえずいいことにします)

コレクタ電流は飽和状態ギリギリまで使いたいので、最大電流(=Ice)ギリギリかそれよりちょっとだけ少なめに置くことにします。 これはポンプに使うコンデンサが空っぽ(0V)と満タン(5V)の全振幅を行ったり来たりする状態(フルスペック動作) を前提としていますが、Vce(sat)やショットキバリアダイオードのVfなどによる降下分もあるので、 実際は5Vよりも少し小さい振幅になるでしょう。まぁでも最大振幅は5Vで見積もっておけば安全かと思います。 5VをIceで割ればコレクタ側抵抗の最低値が求まるので、余裕を含め少し大きめの抵抗値、 かつ工具箱にある抵抗から設定可能なモノを適当に設定します。

TR base curr base reg Ice collector reg collector curr
2SA1015
2SC1815
5mA 1Kohm 150mA 33.3ohm
→37.5ohm
(0.663w)
133mA
2SA817
2SC1627
5mA 1Kohm 300mA 16.7ohm
→20ohm
(1.25w)
250mA
2SA950
2SC2120
10mA 470ohm 800mA 6.25ohm
→6.8ohm
(3.674w)
735mA

各抵抗に流れる電流を元に求めた瞬間最大消費電力を括弧書きで書いてあります。抵抗に電流が常時Ice流れるとして計算した消費電力です。 ただし実際は、貫通電流はほんの一瞬しか流れないし、今回はバッファの先にあるのが10uFのコンデンサですから、 均してしまえば電流は微々たる物だと考えられます。1/4Wでも問題ないと思うんですけどねぇ…。今回の実験では1/4W抵抗と1W抵抗 両方を用意しておいたんですが、1/4Wしか使いませんでした。5V電源ではチャージポンプから取り出せる電流はせいぜい2~30mAですからね。 この電流で試算すれば、上下の抵抗で消費される電力は平均10mW以下といったところでしょう。

もちろん、バッファの出力をチャージポンプの代わりに6Ωスピーカに繋ぐとか、VccやGNDにショートさせるような使い方をすれば、 1/4W抵抗では焼ききれること間違えないでしょう。4Wセメント抵抗とかが必要になるかもしれません。っていうか、 もっとマトモなバッファ回路組んでください。

今回は、#1用の37.5Ωは75Ω抵抗2個で作りました。#2の20Ωや#3用の6.8Ωなどという低抵抗は当然買い置きが無かったので、 買い足しました。20Ωは今回の実験用に2本だけ。6.8Ωは今後使いまわし出来そうなので1/4W袋入りを購入。

計測方法

3組の各トランジスタペアとチャージポンプ回路を通して発生させた負電圧に大小さまざまな抵抗による負荷を掛けて、 テスターで電圧を読み取って電圧と抵抗値の関係を見ていきます。また、「電圧÷抵抗=電流」で取り出せる電流も求めてみます。

今回使用する負荷抵抗は、工具箱に入っていた抵抗を使って1MΩ、1KΩ、470Ω、300Ω、235Ω、150Ω、100Ω、75Ω としました。235Ωは470Ω2個を並列に、150Ωと100Ωはそれぞれ300Ω抵抗を2個・3個並列にして作り出しています。

発生した負電圧にこれらの抵抗を繋いで各電圧を計測するので、負荷が小さければ得られる電圧(負値)は-5Vに近い値を示し、 負荷が大きくなるにつれてだんだん電圧が上昇(0Vに近づく)することになります。

取り出せる電圧・電流を見て、実用になりそうなトランジスタペアがあるかを見極めたいと思います。

ノイズ対策

チャージポンプ回路といえば、ドライバ回路から出力される高電圧と低電圧を元にポンプ動作を行うので、電圧には必ずノイズが載ります。

このノイズを簡単な部品を使って低減させてみた時に、どのくらいの効果が得られるのかをオシロを当てながら考えたいと思います。

具体的には、パスコンとして良く使うような0.1uFコンデンサや、丁度イイカンジのインダクタを組み込んでみます。

0.1uFコンデンサは負荷抵抗と並列に。インダクタは負荷抵抗と直列に組むわけですが、コンデンサの有無、インダクタの有無によって どの程度の変化があるのかをオシロ画面で見てみます。

実験結果(1)…電圧と電流

各トランジスタペアにおける抵抗と電圧の関係

トランジスタ 2SC1815
2SA1015
2SC1627
2SA817
2SC2120
2SA950
コレクタ電流
制限抵抗
37.5Ω 20Ω 6.8Ω
ベース抵抗 1KΩ 1KΩ 470Ω
1MΩ -3.94v -4.02v -4.02v
1KΩ -3.13v -3.34v -3.27v
470Ω -2.91v -3.01v -3.12v
300Ω -2.66v -2.86v -3.00v
235Ω -2.45v -2.74v -2.92v
150Ω -2.00v -2.45v -2.74v
100Ω -1.61v -2.08v -2.55v
75Ω -2.37v

グラフの左側は低負荷(=高抵抗)、右側は高負荷(=低抵抗)になっており、負荷が高まるにつれて電圧が上昇しているのが判ります。 (負電圧なので負荷の上昇により電圧が0Vに近づいていきます)

電流を殆ど取り出さない場合ではどのトランジスタでも約-4Vが取り出せています。

予想通り、Iceが大きいトランジスタの方が負荷上昇による電圧上昇は抑えられることが見て取れます。 2SC2120と2SA950のペアでは75Ω負荷でようやく-2.5Vを超える程度です。

取り出せた電流

トランジスタ 2SC1815
2SA1015
2SC1627
2SA817
2SC2120
2SA950
コレクタ電流
制限抵抗
37.5Ω 20Ω 6.8Ω
ベース抵抗 1KΩ 1KΩ 470Ω
1MΩ -3.94uA -4.02uA -4.02uA
1KΩ -3.13mA -3.34mA -3.27mA
470Ω -6.19mA -6.40mA -6.64mA
300Ω -8.87mA -9.53mA -10.0mA
235Ω -10.43mA -11.66mA -12.4mA
150Ω -13.33mA -16.3mA -18.3mA
100Ω -16.10mA -20.8mA -25.5mA
75Ω -31.6mA

先ほどの電圧のグラフに、電圧と抵抗値から求めた電流を描き加えたものです。(電圧の単位はV、電流の単位はmA)

2SC2120と2SA950のペアでは75Ω負荷の時に-30mA以上取り出せることが判ります。

実験結果(2)…ノイズについて

今回負荷抵抗は300Ω固定とし、負荷抵抗に並列にコンデンサを繋いだり繋がなかったり、 負荷抵抗に直列にインダクタを繋いだり繋がなかったりしました。それぞれをオシロで当たった時のグラフを記します。

ノイズ対策無しの場合

まずは何の対策も打っていない場合の波形です。AC成分だけです。

ご覧の通り、脈動もしているし、ツララも生えています。気にしなければ気にしなくてもいいかもしれませんが…何とかしたい感じでもあります…。

パスコンだけ繋いでみる

ツララがだいたい消えました。

100uHのインダクタだけ繋いだ場合

まずは2Aまで流せる大容量型の100uHの場合。(直流抵抗が小さい…ほぼ0Ω)

脈動が見えにくくなってますが、全域でギザギザがかえって増えているみたい。

次に44mAまでしか流せない100uHの場合。(アキシャルタイプ…直流抵抗は実測で約10Ω)

繋がない方がマシってほどの汚さ。

コンデンサとインダクタを併せて使う場合

まずは2Aタイプのインダクタを組み合わせた場合。

なんと!一気に綺麗に! 目測では大体5mVrmsって感じでしょうか。テスターで計ると、0.01~0.02V程度の電圧降下があるようです。 インダクタの内部抵抗成分にしてはちょっと大きいかなぁ…。

次。アキシャルタイプの100uHインダクタ(直列抵抗約10オーム)の場合。

上記とは実験を行った日程が異なっているせいか、少しツララが残っているっぽいですが、多分100V商用電源の機嫌が悪かったんでしょう。 (上記の2Aタイプを繋いでもツララは少し残ってしまったので)  …ツララを除けば大体綺麗。

ただし、(グラフは載せてませんが)テスターで出力電圧を測ると0.09V程度下がっているようです。 インダクタの内部抵抗による電圧降下が効いているようです。

おまけに、22uHのインダクタ(最大1.3Aのラジアルタイプ)とコンデンサを組み合わせた場合。

おみごと、発振!!!(´o`)

計算では、22uHと0.1uFのLC回路の共振周波数f0は、f0=1/(2PI*sqrt(L*C))なのでおよそ107Khz。 一方グラフから読み取った発振周波数は約120Khz。大体ビンゴみたいですね。ちょっとズレてるんですが…

考察

8ピンPICの実験結果との比較

8ピンPICのバッファに鞭打って搾り出した時の実験では、 300Ω負荷でも4V近く取り出すことが出来たし、75Ω負荷でも3V40mAほど取り出せていましたが、 今回の実験ではそこまでのスペックには至りませんでした。75Ω負荷で2.37V31.6mAって言うところですからね。

まぁ、バッファに使ったトランジスタがFETじゃなくて汎用のバイポーラだから、ある程度のスペックダウンは予想通りでした。 まぁ善戦した方ではないでしょうか?

今回の回路では、バッファに繋いだプラス電源が5Vなのでこのスペックですが、マイコン内蔵のバッファを使っていない分、 回路にちょっと工夫をすれば電源に9Vや12Vなども負電源にすることが可能です。

工夫って言っても大した話じゃありません。マイコンの出力を一旦トランジスタのオープンコレクタで受けて9Vなり12Vなりに変換し、 その出力でバッファをドライブすれば良いわけですね。トランジスタが1個増えるけど、電圧変換回路だからそれはまぁ仕方ない…。

そんなことより、大きい電圧をそのまま反転させて使えるって言うメリットととらえれば、応用範囲はもう少し広がりそうです。 LTC1144を置き換えて使うことができるようになるからね…。今回の実験ではそういう大きい電圧の時にどの程度の負荷でどの程度まで 取り出せるのかはわかりませんでしたけど。

今回の実験では、5Vで取り出せる出力は少々負けてるけど安全動作だし、9Vや12Vにも対応できる余地ありってことでしょうか。 短所よりは長所の方が多そうです。

ノイズについて

マイコンからパルスを出力し、そのパルスを使ってチャージポンプを動かしているわけだから、スイッチングノイズは当然気になるわけで、 その対策としてコンデンサやコイルを繋いで見たところ、そこそこ効果が見られました。コンデンサはセラコンでもフィルムコンでも 適当に見繕って繋いでおけばいいと思いますが、コイルの方は直流抵抗となってしまうので、 同じインダクタンスでもある程度大きい電流を流せるものを使った方がスペック的に有利でしょう。

今回は、同じ100uHでも大容量のものと小容量(よく見るアキシャルタイプ)のものを両方試した見ましたが、 やっぱりちょっぴり大容量タイプの方が大きな出力が取れました。でもまぁ、アキシャルタイプのものでも充分使えるんじゃないでしょうか? 条件によって0.1V近い損失が出ますが、それでも用途によっては充分かなぁ…って思っています。 ただ、定格にはご注意!今回の実験でもアキシャルタイプは定格ギリギリ(?)だったので。

スイッチングに因るノイズのことは当然気になっていたので、上記の通りその近辺の波形をオシロで調べてみたわけですが、 もっと低い周波数とかはどうなんでしょう?ってことで、オシロの周波数をドンドン低く低く変えて行ってみると…

あらら…低周波で結構なノイズが載ってみるみたい。

よーく見てみると、どうやら100Hzっぽいなぁ。もしや…と思って秋月のスイッチングアダプターを疑ってみる…

秋月のスイッチングアダプターに直接1kΩの抵抗を繋いで、抵抗の両端の波形(交流成分)を拾ってみました。

うひょ!酷い… こんなにノイズが載ってたのかぁ… ちなみに抵抗の両端に0.1uFのパスコンを繋いで見ると…

細かいギザギザは減りました。で、残った波はやっぱり100Hzっぽい。これだな、原因は。

ということで、100Hzのノイズの原因は秋月のスイッチング電源っぽいので、電池駆動ならもう少しまともな 波形が出てくるかと思います。実験はしてませんが…

というわけで、0.1uF程度のパスコンをパラレルに、100uH程度のインダクタをシリアルに入れれば だいぶ実用的な電源として使えそうだということが判りました。

まとめ

今回は手に入りやすいバイポーラのトランジスタペアを幾つか取り上げて、実用に使える負電源が作れるか実験してみました。 その結果、そこそこ使えるものが出来たのではないかと思います。

一方、トランジスタをFETに変えるとか、それに併せて抵抗値をもっと小さいものに替えるとか、 そんなバリエーションの追加実験ができればもっとスペックアップを狙うことも可能かと思います。

その場合は、再度ノイズ対策など幾つかの実験を行う必要があるかもしれません。

なひたふさんのサイトによると、 上下の抵抗は10Ω程度でいいと書かれているのですが、両方のトランジスタがONになっちゃうと、 VccからGNDまでの貫通電流は20Ω負荷で流れるということになるのでは??? まぁ、トランジスタのhHEも考えての回路でしょうから、これはこれで上手く動くのかな… オイラの回路ではマイコンの出力をhFE倍して飽和させて使う前提だから、その辺がちょっと違っているのかな?

とにかく、今回は手に入りやすくて安いトランジスタのペアでもそこそこ使える負電源が出来ると判ったので、 今回の目的は達成できたと自画自賛し、実験を締めくくります。